目次
はじめに
新規事業を立ち上げる際、リスクは避けて通れない課題です。しかし、リスク管理とリスク評価を適切に行うことで、事業の成功率を高められます。本コラムでは、リスク管理と評価方法を解説します。リスクの取り扱いについて網羅し、新規事業を成功に導きましょう。
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リスク特定の手法
事業のリスクを適切に管理するためには、まずリスクを特定することが重要です。以下では、リスク特定の手法を解説します。
- SWOT分析
- PEST分析
- シナリオ分析
SWOT分析
SWOT分析とは、強み(S)、弱み(W)、機会(O)、脅威(T)を整理・分析することで新規事業のリスク要因を明確化する手法です。SWOT分析を通じて、自社の強みを活かし弱みを克服する方策を立てることが可能になります。また、市場の機会を掴み、脅威に対処する準備ができるでしょう。
SWOT分析の実施は、新規事業の成功に欠かせない重要なステップです。いかに良いアイデアやビジネスモデルであっても、リスクマネジメントが不十分であれば不成功に終わる可能性が高くなります。まずはSWOT分析を通じて、自社に合ったプランを提案しましょう。
SWOT分析の手順
新規事業を開始する前にSWOT分析を行い、リスクを最小限に抑えましょう。手順は以下の通りです。
- 強み(S)をリストアップ:特定の技術や知識、ブランド力、資金、ネットワークなど新規事業の強みとなる要素を洗い出します。
- 弱み(W)をリストアップ:市場調査や商品開発の不足、財務面の弱さ、人材不足など新規事業の弱みとなる要素を洗い出します。
- 機会(O)をリストアップ:市場動向や競合の動向、法改正、新技術の登場など新規事業の可能性となる要素を洗い出します。
- 脅威(T)をリストアップ:市場競争の激化、景気の低迷、法令改正、外部リスク(天災・人災)など新規事業に影響を与える可能性のある要素を洗い出します。
- 各要素間の関係性を分析し、戦略を策定:上記4つの要素を分析することで互いの関係性を把握し、新規事業を成功に導くための最適な戦略を策定します。
SWOT分析は新規事業の立ち上げだけでなく、既存事業の改善や新商品開発の検討など様々な場面で活用されます。分析結果は事業計画書の重要な要素の一つとして、投資家や金融機関に説明する際に必須です。
PEST分析
PEST分析とは、新規事業を展開する上で重要な外部環境を分析する手法です。Pは政治・法律、Eは経済、Sは社会・文化、Tは技術を表します。これら4つの要素を分析することで、新規事業におけるリスク要因を特定し、市場環境への適応力を高められます。
例えば政治・法律要因としては、政府規制や法律の変更が新規事業に与える影響を考慮する必要があります。経済要因としては、景気変動やインフレ率、為替レートなどが考えられるでしょう。社会・文化要因としては消費者の価値観やライフスタイルの変化が、技術要因としてはICTの発展やデジタルトランスフォーメーションが挙げられます。PEST分析を通じて外部環境の変化に敏感に対応し、新規事業を成功に導くための戦略を立てることが重要です。
シナリオ分析
シナリオ分析は、新規事業を成功させるために不可欠な手法の一つです。この手法では、複数の未来シナリオを設定し、それぞれのシナリオにおけるリスク要因やビジネスチャンスを評価します。シナリオ分析を行えば、将来起こり得るリスク要因を予測し、そのリスクに対応する戦略を策定できるようになるでしょう。
また、ビジネスチャンスを見逃すことなく、迅速かつ正確な意思決定を行えるようになります。シナリオ分析は、不確実性の高い状況下でも柔軟な戦略を立てることができ、新規事業の成功に繋がる重要な手法です。新規事業を開始する場合は、シナリオ分析を積極的に活用しましょう。
シナリオ分析の手順
- 新規事業におけるリスクを把握するために、重要な課題や疑問点を特定します。
- 複数の未来シナリオを設定し、それぞれのシナリオにおける新規事業の展開や市場環境などを想定します。
- 各シナリオにおけるリスク要因とビジネスチャンスを評価し、リスクとチャンスを明確にします。
- シナリオ間で比較・分析を行い、最も有望なシナリオを選択し戦略を策定します。
シナリオ分析は、新規事業においてリスクマネジメントを行うための有用な手法です。新規事業を展開する際には様々なリスクが存在し、それらを未然に防ぐためにシナリオ分析は欠かせません。シナリオ分析を通じて、リスク要因やチャンスに対する理解を深め事前に対策を立てることで、新規事業の成功に近づきます。
リスク評価の基準
リスク特定後、リスク評価を行ってリスク対策の優先順位を決定します。リスク評価は、定量評価と定性評価に分けられます。
- リスクの定量評価
- リスクの定性評価
リスクの定量評価
リスクの定量評価は、リスク要因に対して数値を割り当てて評価する方法です。具体的には、リスクの発生確率と影響度を数値化しリスクの大きさを算出します。この方法でリスクを定量評価することで、リスクの本質を把握し、適切なリスクマネジメントを行えます。
リスクの定量評価の手順は以下の通りです。
- リスク要因の発生確率を推定
リスク要因の発生確率を専門家によるアンケート調査やヒアリングの形で推定します。蓄積された情報を考慮して最も適切な発生確率を算出します。
- リスク要因の影響度を推定
リスク要因が引き起こす影響を数値化します。例えば、財務的損失の場合は金額、社員の離職の場合は代替人員の採用にかかる費用などです。こうした影響度を、専門家の意見や統計データをもとに算出します。
- リスクの大きさを算出(発生確率 × 影響度)
リスク要因の発生確率と影響度をかけてリスクの大きさを算出します。この値は、リスクの優先度を決めるときに使用します。
- リスクの優先順位を決定
リスクの優先順位を、算出されたリスクの大きさを比較して決定します。リスクの優先順位を付けたら、対策の優先順位を決定します。
リスクの定量評価は、新規事業の立ち上げ前に行いましょう。定量評価を行うことで、リスクの本質を把握し、より効果的なリスクマネジメント策を打ち出せます。
リスクの定性評価
リスクの定性評価は、数値化が難しいリスク要因を評価する方法であり、新規事業において重要な評価方法の一つです。事業計画書においては、リスクの有無やその内容の詳細について記述することが欠かせません。リスク要因の発生確率と影響度を評価するため、専門家や関係者の意見を参考に定性的に評価することが一般的です。
具体的には、以下のようなステップがあります。
- リスク要因の発生確率を評価(例: 低、中、高)
- リスク要因の影響度を評価(例: 低、中、高)
- リスク要因をマトリクス上にプロット
- リスクの優先順位を決定
これらのステップによって、リスクの優先順位を決定できます。リスクの内容に合わせて、専門家や関係者の意見を十分に取り入れ、リスクの正確な評価を行いましょう。
リスク対策の立案
リスク評価をもとにリスク対策を立案します。リスク対策には以下の4つがあります。
- 予防策
- 軽減策
- 転嫁策
- 受容策
リスク予防策
リスク予防策は新規事業の成否に重要な影響を与えます。事前にリスクを把握し、予防しましょう。具体的には、法令遵守の徹底、従業員の教育や研修などの人材育成、事業計画の慎重な見直しが必要です。特に、法令違反に対する罰則やリスクに関しては常に把握していなければなりません。また、リスク予防のためには、市場調査や競合分析の実施、資金調達の計画なども大切です。リスク予防策を十分に講じた上で、新規事業をスタートすることが望ましいでしょう。
リスク軽減策の具体的内容
リスク軽減策とは、新規事業におけるリスクが発生した場合の影響を軽減するための対策です。具体的な内容としては、以下のようなものがあります。
バックアップシステムの整備
データのバックアップが定期的かつ正確に行われるようにすることで、システムの障害やデータの紛失によるリスクを軽減します。
事業継続計画の策定
万が一の事態に備えて、社員の安全確保や業務の継続、必要な情報提供などの手順を明確化し、迅速かつ的確な対応を可能にすることで事業の継続性を確保します。
リスク分散戦略
リスクを分散させるために複数の市場や地域に展開することで、リスクの影響を最小限にし、リスクに強いビジネスモデルを構築します。
以上のような具体的なリスク軽減策を実施することにより、新規事業におけるリスクを最小限に抑え、安定したビジネスモデルの構築に繋げられます。
転嫁策
転嫁策とは、自社が抱えるリスクを第三者に負担してもらう対策のことです。具体的には保険への加入や契約における免責条項の設定が挙げられます。この方法は、リスクを自社で負うことができない場合や、リスクを回避するための他の方法が見つからない場合に有効でしょう。
ただし、転嫁先でリスクが生じた場合に適切に対処できるように、事前に検討を重ねた上でマニュアルを十分に準備しなければなりません。また、転嫁先がリスクを受け入れてくれるかどうかについても確認が必要です。そのため転嫁策については、事前にリスクマネジメントの専門家や法務担当者と協力して慎重に検討しましょう。
受容策
受容策は、リスクを受け入れることを選択するという対策です。リスクはつきものであり、必ずしも完全に回避できるものではありません。しかし、リスクの発生確率が低く影響が限定的である場合には、受容策をとることが適切です。そのため、事前にリスクマネジメントを行って、受容策を選択するための情報収集やリスクの特定・分析を行いましょう。
また、受容策をとる場合でも、そのリスクを十分に認識し把握した上で、必要な対策を講じなければなりません。受容策を選択することで、新規事業の推進を妨げることなくかつリスクを抑えつつ、目標達成に向けて挑戦できます。
リスクコミュニケーションの重要性
リスク対策が立案された後はリスクコミュニケーションが重要となります。リスクコミュニケーションは、以下の2つに分けられます。
- 社内リスクコミュニケーション
- 社外リスクコミュニケーション
社内リスクコミュニケーション
社内リスクコミュニケーションは、新規事業において重要な役割を担います。組織内でリスク情報を共有することで、リスク対策を適切に実行するための情報交換が行われます。社内コミュニケーションが不適切な場合、リスク情報の共有が遅れたり、リスク対策が不十分になるかもしれません。
このリスクを軽減するために、定期的なリスクレポートやリスク管理委員会の開催などを実施しましょう。社内におけるリスクコミュニケーションの促進は、新規事業の成功に欠かせないポイントです。そのため、社内コミュニケーションの円滑な実施が求められます。
また、情報の共有方法や内容に関するガイドラインの策定も重要です。新規事業に関するリスク情報だけでなく、社内の情報共有の在り方についても明確に定め、社員の負担を軽減するように心がけましょう。リスクコミュニケーションの改善に積極的に取り組むことで、社内情報共有の質の向上や、リスク対策の迅速な実行を実現できます。
社外リスクコミュニケーション
新規事業における社外リスクコミュニケーションでは、取引先や顧客、投資家などのステークホルダーに対してリスク情報を開示します。これは信頼関係を築くための情報交換でもあります。社外リスクコミュニケーションにおいては、適切な情報開示やコンプライアンスに十分注意しなければなりません。
具体的には、以下の点が求められます。
適切な情報開示
新規事業においては、ステークホルダーに対してリスク情報を適切に開示しましょう。具体的には、新規事業に関するリスク要因や事業計画、財務情報などです。また、ステークホルダーからの質問に対しても正確かつ適切に回答しましょう。
コンプライアンス
新規事業の展開には多くの場合、法的規制が関係します。そのためコンプライアンスに十分配慮しましょう。具体的には、法令や条例を遵守すること、情報開示に関する規定に従うことなどが挙げられます。
透明性の向上
新規事業の取り組みに関する情報が透明であることは、ステークホルダーとの信頼関係を築く上で非常に重要です。透明性の向上のためには、リスク情報や財務情報を公開したり、社外からの情報提供を受け入れると良いでしょう。
これらのポイントに留意しながら適切な社外リスクコミュニケーションを行うことが、ステークホルダーとの信頼関係を築くことに繋がります。リスク情報の適切な開示は企業にとって重要な義務であることを忘れずに、情報開示についてのルール作りや周知を徹底しましょう。
リスク管理の継続的改善
リスク管理は、継続的な改善が求められるプロセスです。リスク管理体制を効果的に運用できます。
- PDCAサイクルの活用
- リスクレビューとモニタリング
PDCAサイクルの活用
リスク管理では、PDCAサイクルが継続的な改善のために利用されます。PDCAサイクルは、「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(評価)」「Act(改善)」の4つのフェーズから構成されます。
具体的には以下のような手順でPDCAサイクルを回しましょう。
- Plan(計画)
リスク管理計画を策定しましょう。リスクの特定、分析、評価を行いリスク対策を計画します。計画は、リスクが発生する可能性や影響度合いを予測し、それに対して備えることが目的です。 - Do(実行)
計画に基づいてリスク対策を実施しましょう。具体的には、リスク回避、低減、負担分散、保険などを活用します。 - Check(評価)
リスク対策の効果を評価しましょう。リスクの状況を定期的に監視し、リスク対策が有効かどうかを確認します。 - Act(改善)リスク管理計画の改善・修正を行いましょう。リスク管理計画に不備があった場合は、再度リスクの特定、分析、評価を行いリスク対策を改善します。
PDCAサイクルを実践することで、リスクの早期発見やリスク対策の改善が可能になるため、新規事業においても積極的に活用することが重要です。
リスクレビューとモニタリング
新規事業には多くのリスクが伴います。そこで、リスクレビューとモニタリングを行いリスク管理を強化しましょう。リスクレビューでは、新規事業に関わるリスクを洗い出し評価します。リスクの発生確率や影響度を評価し、含有リスクを把握することで、リスクに対する対応策を策定できます。リスクレビューでは、ヒアリングや現地調査を行って、リスクを可能な限り正確に把握することが重要です。
またモニタリングでは、リスク対策の効果を定期的に評価し、必要に応じて改善・修正を行いましょう。新規事業では、事業内容の変化や環境変化によって新たなリスクが発生する可能性があるため、モニタリングを継続的に行うことが重要です。モニタリングでは、リスクマトリクスを作成しリスクの状況を可視化することで、リスク管理の進捗状況を把握しやすくできます。
これらの取り組みにより、組織が持続的にリスク管理を行い、新規事業のリスクを適切にコントロールすることが可能になるのです。
まとめ
新規事業におけるリスク管理は事業の成功に大きく寄与します。リスク特定、評価、対策立案、コミュニケーション、継続的改善を実施することで新規事業のリスクを最小限に抑え、事業の成長を促進できます。実際にリスク管理を実施する際には、自社の事業に適した方法を選択し、柔軟に対応することが重要です。
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