目次
はじめに: 新規事業とKPIの重要性
新規事業創出は企業の成長を担う重要な要素であり、競争力の維持や事業の拡大を目指す企業にとっては欠かせないものです。しかし、新規事業を立ち上げる際には、アイデア評価や事業の成果を客観的に判断できる指標が必要となります。ここで登場するのがKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)です。KPIは、事業目標に対する進捗状況を測るための指標であり、新規事業の成功を左右する重要な要素となります。
このコラムでは、新規事業創出におけるKPIの設定方法や活用法、成果測定・評価方法について、具体的かつ分かりやすく解説していきます。
尚、弊社では新規事業のコンサルティング支援サービスを行っております。新規事業に関してお困りの事があれば、お気軽にご連絡ください。
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1: 新規事業におけるKPIの設定方法
1-1:新規事業におけるKPI設定の難しさ
新規事業への進出は企業が持続的な成長を続けるために不可欠なステップです。新たな市場や新たなビジネスモデルを探求することで、企業は競争優位性を保ちつつ、将来的なリスクを軽減することができます。しかし、新規事業の成功を定量的に評価し、その結果を管理するためのKPIを設定するのは容易なことではありません。この困難さにはいくつかの理由があります。
まず、新規事業のKPIが既存事業のKPIと比較されると、多くの場合、不利な立場に立たされます。既存のビジネスはしっかりと構築され、既に一定の成果を上げているため、数値上では高いパフォーマンスを示すでしょう。それに対して新規事業はまだ発展の初期段階であり、比較的低い数値が出ることが多いのです。しかし、それは新規事業が失敗しているという証ではなく、単に新規事業がまだ成熟していない証拠に過ぎません。新規事業の価値を公正に評価するためには、その独自性を理解し、適切な基準で評価する必要があります。
また、新規事業では中長期的な視野が重要となるため、短期のKPIによる評価は問題を引き起こす可能性があります。新規事業は市場の探求や製品開発の進行など、初期の投資が必要なフェーズを経て初めて成果を上げます。そのため、早急に高いリターンを求める短期的なKPIによっては、長期的な成功を妨げる可能性があります。
さらに、新規事業は未知の領域への挑戦であり、その結果を正確に計測するためのKPIが必ずしも存在しない場合があります。従来の方法で評価することができない新規事業の成功を計測するためには、新たな指標を開発する必要があります。
これらの課題を克服するためには、新規事業におけるKPIの設定は戦略的かつ慎重に行う必要があります。具体的には、事業の成熟度や業界の状況、企業のビジョンに応じて、最も適切なKPIを選択または開発することが求められます。既存のフレームワークにとらわれずに、新たな視点から事業の価値を評価することで、新規事業はその本当の可能性を引き出すことができるのです。
新規事業のKPI設定は確かに難しい課題ですが、それは同時に新規事業が新たな価値を生み出す機会でもあります。KPIはただ結果を測るための指標ではなく、成功への道筋を示すナビゲーションのようなものです。新規事業が本当に成功するためには、その成果を適切に評価し、その進行を適切に管理するためのKPI設定が不可欠なのです。
参考:
新規事業と既存事業の立ち位置違いは?:企業が知るべきバランスと統合の戦略
新規事業はなぜ必要か?また社内にどう新規事業を理解してもらうか?
1-2: 目標と関連性の高いKPIの選定
新規事業においてKPIを設定する際には、事業目標と関連性の高い指標を選定することが重要です。具体的には、売上増加や顧客満足度の向上など、事業目標に直接寄与する指標をKPIとして選ぶことが望ましいです。
例えば、新規事業がオンラインECサイトである場合、売上や利益だけでなく、サイト訪問者数や購入率、リピート率なども重要なKPIとして捉えられます。
1-3: 定量的・定性的KPIのバランス
新規事業におけるKPIは定量的な指標だけでなく、定性的な指標も含めてバランス良く設定することが重要です。定量的KPIは売上や利益など具体的な数値で示される指標であり、定性的KPIは顧客満足度やブランドイメージなどの主観的な評価を示す指標です。
新規事業では、顧客ニーズの把握やブランドの価値向上も重要であるため、定量的KPIだけでなく定性的KPIも設定し、事業の進捗状況を多角的に把握することが求められます。
1-4: 短期・中期・長期のKPI設定
新規事業の成功には、短期・中期・長期のKPIを設定し、段階的な目標達成を目指すことが重要です。短期的なKPIは、新規事業の立ち上げや市場参入時に達成すべき目標を示し、中期的なKPIは事業拡大や競争力の維持に関連する目標を示します。長期的なKPIは、事業の成熟期における持続的な成長や市場シェア獲得などの目標を示すものです。
短期・中期・長期のKPIを設定することで、新規事業の成長を促す戦略を段階的に進めることができます。
2: KPIを活用した新規事業のパフォーマンス向上方法
2-1: モニタリングと評価のサイクル
KPIを活用する際には、定期的なモニタリングと評価を行い、事業のパフォーマンスを向上させることが重要です。モニタリングでは、KPIの進捗状況を把握し、達成が遅れているKPIに対して改善策を検討します。評価では、KPIに基づいて事業の成果を判断し、戦略の見直しや新たな目標設定を行います。
このモニタリングと評価のサイクルを繰り返すことで、新規事業のパフォーマンスを継続的に向上させることができます。
2-2: KPIに基づく意思決定の実践
KPIは、事業戦略の策定や意思決定において重要な役割を果たします。具体的には、KPIを基に戦略の優先順位を決めたり、リソースの配分を決定したりします。このように、KPIに基づいて意思決定を行うことで、新規事業の成果を最大化することができます。
2-3: チーム内でのKPI共有と連携
新規事業においては、チーム内でKPIを共有し、連携を図ることが重要です。チームメンバー全員がKPIを理解し、目標に対する取り組みを共有することで、チーム全体の成果を向上させることができます。
定期的なチームミーティングでKPIの進捗状況を報告し合い、改善策やアイデアを共有することで、チーム内のコミュニケーションを活性化させ、新規事業の成功につなげることができます。
3: 新規事業の成果測定・評価方法
3-1: KPI達成度の測定
KPIの達成度を測定することで、事業の成果を評価することができます。達成度を定期的にチェックし、目標達成に向けた取り組みが適切であるかを確認しましょう。達成度が低い場合は、改善策を検討し、目標達成に向けたアクションを実行しましょう。例えば、ある新規事業の売上目標達成度が低い場合、ターゲット市場の再分析や販売戦略の見直しを行い、達成度を向上させることができます。
3-2: KPIと事業成果の相関分析
KPIと事業成果の関係性を理解するために、相関分析を行うことが有効です。相関分析を通じて、どのKPIが事業成果に大きく影響しているかを把握し、重要なKPIに対する取り組みを強化することで、事業の成果を最大化することができます。例えば、顧客獲得数と売上の相関が高い場合、顧客獲得に重点を置いた施策を強化することで、事業成果を向上させることができます。
3-3: KPIの見直しと改善
事業の進捗や市場状況の変化に応じて、KPIの見直しと改善が必要になることがあります。定期的にKPIを見直し、現状に適した指標に更新することで、事業の成果を継続的に向上させることができます。また、改善策を実行した際の効果を検証し、さらなる改善のためのアイデアを考案しましょう。例えば、新規事業の市場状況が変化し、従来のKPIが適切でなくなった場合、新たな市場ニーズに対応するためのKPIに見直しを行い、事業成果を向上させることができます。
4: 新規事業における重要なKPI事例と実践
新規事業創出において、KPIの選定と活用は事業の成功に大きく寄与します。この章では、新規事業において重要なKPI事例を紹介し、それぞれの実践方法について解説します。
4-1: 顧客関連KPI
顧客関連KPIは、新規事業の顧客基盤を構築する上で重要な指標です。顧客獲得や顧客満足度など、顧客との関係性を測るためのKPIを適切に設定し、改善に取り組みましょう。
4-1-1: 顧客獲得数・顧客維持率
顧客獲得数は、新規事業の成長に欠かせない指標です。一定期間内に獲得した新規顧客数を計測し、獲得効果を評価します。また、顧客維持率は、継続して利用してくれる顧客の割合を示す指標で、顧客ロイヤリティの向上に役立ちます。
4-1-2: 顧客満足度・ネットプロモータースコア(NPS)
顧客満足度は、顧客が新規事業に対してどれだけ満足しているかを測る指標です。アンケートやインタビューなどで定期的にモニタリングし、顧客のニーズに応えるサービス改善に取り組みます。また、NPSは顧客が新規事業を他人に紹介する意向を示す指標で、口コミ効果を評価する際に役立ちます。
4-1-3: 平均購入額・リピート率
平均購入額は、顧客一人当たりの購入金額を示す指標で、売上向上に直結します。リピート率は、繰り返し購入してくれる顧客の割合を示す指標で、顧客ロイヤリティや商品の魅力を評価する際に役立ちます。
4-2: 財務関連KPI
財務関連KPIは、新規事業の収益性や財務健全性を評価するための重要な指標です。適切な財務KPIを設定し、事業の成長と収益性の向上に努めましょう。
4-2-1: 売上高・利益率
売上高は、新規事業の収益を示す基本的な指標です。一定期間内の総売上を計測し、事業の成長を評価します。利益率は、売上高に対する利益の割合を示し、事業の収益性を測る指標です。
4-2-2: 顧客生涯価値・貢献利益
顧客生涯価値は、顧客一人当たりが新規事業にもたらす総利益を示す指標で、顧客獲得やリテンション施策の効果を評価します。貢献利益は、売上から変動費を差し引いた利益を示し、事業の収益性やコスト管理の効果を測る指標です。
4-2-3: 投資対効果(ROI)・損益分岐点
投資対効果(ROI)は、投資した資源がどれだけの利益を生み出したかを示す指標で、新規事業の収益性を評価する際に役立ちます。損益分岐点は、収益がコストを上回り始める点を示し、事業の財務健全性を判断する指標です。
4-3: 内部プロセス関連KPI
内部プロセス関連KPIは、新規事業の運営効率や品質管理を評価するための指標です。効率性や生産性の向上に取り組むことで、新規事業の競争力を高めましょう。
4-3-1: 効率性・生産性
効率性は、コストや時間に対する成果を示す指標で、新規事業の運営効率を評価します。生産性は、投入した資源がどれだけの成果を生み出したかを示す指標で、事業のパフォーマンス向上に役立ちます。
4-3-2:サイクルタイム・リードタイム
サイクルタイムは、プロセスの開始から終了までにかかる時間を示す指標で、新規事業の効率性を評価します。リードタイムは、顧客からの注文から納品までの期間を示し、顧客満足度や業務効率の改善に役立ちます。
4-3-3: 品質管理・改善率
品質管理は、新規事業の製品やサービスの品質を維持・向上させるための取り組みです。品質に関連するKPIを設定し、品質向上を目指します。改善率は、問題の発生率やクレーム件数などを測定し、品質改善の効果を評価する指標です。
4-4: 成長・学習関連KPI
成長・学習関連KPIは、新規事業の持続的な成長や従業員のスキル向上を評価するための指標です。組織の成長や従業員のスキルアップを促す取り組みを行い、新規事業の競争力を高めましょう。
4-4-1: 従業員満足度・エンゲージメント
従業員満足度は、従業員が組織や新規事業に対してどれだけ満足しているかを示す指標です。アンケートやインタビューを通じて定期的にモニタリングし、組織の風土改善に取り組みます。エンゲージメントは、従業員が組織に対してどれだけ熱心に取り組んでいるかを示す指標で、組織の活性化や成果向上に役立ちます。
4-4-2: 研修受講率・スキルアップ度
研修受講率は、従業員が研修を受講する意欲を示す指標で、スキルアップや人材育成に効果的です。スキルアップ度は、従業員のスキル向上や能力開発の程度を示す指標で、新規事業の競争力強化に役立ちます。
4-4-3: イノベーション指数・特許取得数
イノベーション指数は、新規事業が創造する革新的なアイデアや取り組みの程度を示す指標です。この指数を高めることで、新規事業の競争力を向上させることができます。特許取得数は、新規事業の技術的な革新力を示す指標で、市場での独自性や優位性を評価する際に役立ちます。
以上のKPI事例や実践方法を参考に、新規事業創出におけるアイデア評価を行い、事業の成長と成功に繋げましょう。適切なKPIを設定し、定期的なモニタリングと改善を行うことで、新規事業の目標達成に近づけることができます。
まとめ: 新規事業におけるKPIの活用で成功につなげる方法
新規事業創出において、KPIは事業の目標達成や成果測定・評価において重要な役割を果たします。KPIの設定方法や活用法、成果測定・評価方法を理解し、実践することで、新規事業の成功を実現することができます。具体的には、以下のポイントを意識してKPIを活用しましょう。
- 目標と関連性の高いKPIを選定する。
- 定量的・定性的KPIのバランスを保つ。
- 短期・中期・長期のKPIを設定し、段階的な目標達成を目指す。
- 定期的なモニタリングと評価を行い、パフォーマンスを向上させる。
- KPIに基づく意思決定を実践する。
- チーム内でKPIを共有し、連携を図る。
- KPI達成度を測定し、事業成果との相関分析を行う。
- KPIの見直しと改善を行い、事業目標に適した指標を継続的に設定する。
これらのポイントを踏まえたKPIの活用は、新規事業創出の成功に大きく寄与します。新規事業を推進する企業の方々は、ぜひ本コラムの内容を参考に、効果的なKPIの設定や活用法を取り入れてください。
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参考:
新規事業の目標設定の方法を解説。成功への道筋を描くコツとポイントは?
新規事業におけるマネタイズの極意:難関解決から数値シミュレーションまでの手順