INFOHUBコラム

ブランド戦略にデジタルマーケティングを効果的に融合させる

デジタルマーケティングは、ブランド戦略におけるコミュニケーション計画と密接に関係する

DXの推進・普及を待つまでもなく、既に私たちはコミュニケーションの大部分をデジタルメディアによって行っています。商品を購入する際は事前にスマートフォンで検索し、レビュー情報や価格を調べるのが当たり前の時代になりました。

よく利用するお店のクーポンはもはや紙ではなく、LINEやアプリで提供されるのが普通です。ブラウザを開けば、ユーザーが興味を示しそうな広告が次々と現れてきます。

技術やメディアの発達により、デジタル(電子的手法)でできることが、以前に比べ格段に進化したのです。

その一方で、商品そのものは色や形状、質感を伴うリアルなものとして変わらず存在します。飲食の提供や試着、施術などその場にいなければ享受できない体験型の商品であれば、サービスする側とされる側が同じ空間に、同時に存在しなければなりません。

そこには、人やモノによる物理的なコミュニケーションが必ず介在します。デジタルコミュニケーションは確かに購買行動に大きな影響力を発揮します。しかし私たちはデジタルな情報だけでなく、それを含めた総合的な情報の総和によって、その商品やブランドが自分にとって魅力あるものかどうか、を判断するのです。

この記事では、企業やブランドの価値を対象者に的確に伝達する「ブランド戦略」と、「デジタルマーケティング」の関連について解説します。

ブランドにとって重要な意味を持つこの二つを意識的に共振(シンクロナイゼーション)させることで、対象者とのより望ましい関係性構築が期待できます。

なぜデジタルマーケティングとブランド戦略の融合が必要なの

私たちの購買行動はデジタルも含めた総合的な情報の総和に影響される
様々なタッチポイントが複合し「カスタマージャーニー」が形成される

冒頭で、私たちの購買行動はデジタルも含めた総合的な情報の総和に影響される、と述べました。ショップで椅子を購入するシーンを例に、そのプロセスを具体的に考えてみましょう。

  • 椅子を新調しようと思い立つ。(自発的に必要性が生じた場合と、広告や記事など外部からの刺激でニーズが誘発された場合に分けられる)
  • くつろげる椅子、仕事で使う椅子、子供用、食卓用など、用途や目的に合わせて商品をリサーチする。
  • ネットショップかリアル店舗か、購入場所や手段について検討する。
  • リアル店舗の場合、品ぞろえやアクセス性、配送サービスや価格帯などを調べ、比較検討する。
  • webサイトの地図や案内を頼りに店を目指す。状況によっては電話やチャットなどで事前にコンタクトをとる。
  • 店舗の外観が見え、看板や店頭の状況、入店されるお客さまの様子も目に入る。
  • 店内に入り、陳列や商品(サービス)の質感、店員の接客(立ち居振る舞いや知識、熱量、気遣い、包装や会計時の態度など)を体感する。これらを通じて店舗の印象が形成される。
  • 購入候補の商品を目の当たりにし、形状や質感・素材、デザイン、使用感などを実際に体感する。これらを通じて商品とそのメーカーの印象が形成される。

ニーズが発生した段階では、まだ購入商品は確定していません。消費者は自分が椅子を使うシーンを、漠然としたイメージとして思い描いています。そこでデジタル・ノンデジタルを交えた様々なメディアと接触し、情報を収集します。

この段階で有力な購入候補の商品(または購入する店舗)が浮上したとしたら、その商品・店舗は消費者のニーズに「刺さる」コミュニケーションに、ひとまず成功したことになります。有力候補のイメージを持った消費者はその記憶を携えつつ、そうでない消費者はまだ漠然とした状態のまま、次のステップに進みます。

こうして「椅子が欲しいな」と思った時点から実際に購入に至るまでの間、消費者の脳内でデジタル・リアルをとりまぜた、様々な情報の収集と処理が行われていきます。そこでは「これはデジタル」「これはノンデジタル」という区別はなされません。商品やメーカーに対する印象、あるいは販売店に対する印象が、購入体験全体を通じた一連の流れの中で積み重ねられていきます。

では、この流れの途上で、消費者を混乱させるコミュニケーションが混じったとしたら、どうでしょうか。

例えばあなたがネットで見つけた椅子の商品情報から、「ゆとりあるラグジュアリーな時間と空間」という付加価値を期待したとします。検索で取扱店の所在地を探して購入に向かうと、店舗の場所がなかなかわかりません。サポートデスクに電話しても自動音声で長々と待たされます。ようやく繋がったにもかかわらず、その部門ではすぐに答えられずに要領を得ませんでした。

なんとか自力で店を見つけ、商品を見せてもらうとネットで見た印象とは異なり、期待した水準の品質ではありませんでした。別の品物を見せてもらおうと店員を呼びますが、忙しそうにしていてあまり注意を払ってくれません。

結局改めて他の店舗を探し、そこで別のメーカーの椅子を勧められ、満足したあなたは即日配送で購入できました。

商品やサービスが消費者の手に渡るまでには、何段階ものステップを必要とします。たとえ初期の段階で優位性を獲得できたとしても、その後の顧客体験(カスタマー・エクスペリエンス)でマイナス評価となってしまっては意味がありません。

望ましいブランドイメージを形成するためには、顧客体験のあらゆる状況において、ブレのない一貫したコミュニケーションを心掛けることが大切なのです。

デジタルマーケティングは、いまや顧客や対象社会とのコミュニケーションに、重要な役割を果たしています。商品・サービスや店舗・企業のブランド形成に大きくかかわる要素だからこそ、慎重な設計が求められます。俯瞰的な視点で立案されたブランド戦略をベースとして、より効果的なデジタルマーケティングを展開していきましょう。

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デジタルマーケティングとブランド戦略を共振させるには

ブランディング、あるいはブランド戦略という言葉を目にする機会が最近増えています。

わが国のマーケティングでブランドという概念が注目されるようになったのは、1994年に邦訳されたD.アーカーの「ブランド・エクイティ戦略」がきっかけです。その後90年代から2000年代初頭まで、多くの企業がブランド構築を意識した戦略を展開しました。しかし国内経済の停滞とともにその視点はいつしか失われ、企業の関心は価格競争力の強化や、業務の効率化に移行していきます。

やがてスマートフォンの普及、SNSをはじめとする新しいメディアの進展、働き方改革の推進など環境要因が大きく変化し、個人や小規模企業、スタートアップ企業でも比較的容易に社会にコミュニケートできる時代が到来しました。そこで数ある競合の中から存在をアピールし、他にない独自の価値を伝達するためのブランディング、ブランド戦略が再び注目されるようになったのです。

「ブランド戦略」を定義する

デジタルマーケティングは、ブランド戦略におけるコミュニケーション計画と密接に関係する
図1:ブランドコミュニケーションの全体像

一口に「ブランド戦略」といっても、その解釈は様々です。ロゴや商品パッケージなどのビジュアルを統一してイメージを管理すること、という認識もいまだ浸透しています。間違いではありませんが、それはブランド戦略のある一面にすぎません。

図1は、ブランドコミュニケーションの全体像を示した模式図です。ブランド戦略を考えるにあたってまず意識すべきは、ブランドに固有の理念、マインドの部分です。

自分たちは誰に対し、どのような価値を何によって提供するのか。またそれを通じて何を目指し、社会の中でどのような存在でありたいと願うのか。

このマインドが、ブランドのアイデンティティを形成する核となります。そしてそのマインドを現実のものとするために、企業はヒト、モノ、カネという経営資源を用いて「マーケティングの4P(Product, Place, Price, Promotion)、4C(Customer, Convenience, Cost, Communication)」を組み合わせ、事業を構築していくのです。

コミュニケーションの対象者は、まずは顧客です。しかしそれ以外にも取引先や従業員、求職者や株主など、多くの関係社会(ステークホルダー)が存在します。これら多種多様な関係社会に対し、自分たちのブランドの価値をブレることなく、一貫性を持って伝達していくことが、非常に重要です。

そのプロセス全体を俯瞰的に設計し、ステークホルダーとのあらゆる接点、あらゆる段階をコントロールし、フィードバックしていく。これこそがブランド戦略の全体像です。

デジタルマーケティングとブランドのタッチポイント

ここでもう一度、図1:「ブランドコミュニケーションの全体像」を見てください。

マインドを核として4P・4Cに基づき事業を構築した企業は、顧客をはじめとする関係社会と様々な接点=タッチポイントを持ちます。商品・サービスそのもの、それを売る店舗や営業担当者、製造工程における関係者との接触、広報・広告、また各種の調査や物流などは、すべてブランドのタッチポイントです。

こうしたタッチポイントの中に、デジタルマーケティングも含まれます。デジタルマーケティングの効果を最大化するためには、まず前提としてブランドコミュニケーションの全体像を明らかにし、ブランド戦略を立案する必要があるのです。

ブランド戦略の立案

ブランド戦略におけるPDCA
ブランド戦略における基本的なPDCA

ではそもそもの核となるブランド戦略をどのように立案していけばよいのでしょうか。ここではその概略を、PDCAモデルを用いて説明していきましょう。

1)ブランドのメッセージを確立する【PLAN】

核となるマインド(理念)が何か、を明確にします。
理念要素には、例えばMVV(ミッション、ビジョン、バリュー)、信条、使命、自己規定、クレドなどと呼ばれる企業やブランドに固有の概念があります。創業者の言葉やディスカッション、リサーチなどを通じてこれらの要素を抽出し、明文化します。

マインドが明確化されたら、それを視覚や行動の面で伝達できるようビジュアルとビヘイビアの要素を確立します。ブランドのタッチポイントで発せられる有形・無形のメッセージは、マインド、ビジュアル、ビヘイビアを指針として設計します。

2)ブランドコミュニケーションの全体像を俯瞰し設計する【PLAN】

マーケティング戦略、事業戦略に基づいてどのようなタッチポイントが必要になるのか、コミュニケーションの対象者はどのような人々か、について詳細に検討します。

1章で、椅子を購入するシーンの想定事例を挙げました。実は、これは「カスタマージャーニー」と呼ばれるマーケティングツールの考え方に則っています。

カスタマージャーニーとは、顧客が商品やブランドに対してどのような体験を積み重ねていくのかについて、スタートから購入、使用、その後の拡散やフィードバックに至る一連の流れをシミュレートするものです。一般的には、リサーチした資料やこれまでの経験・蓄積を元に関係するスタッフがディスカッションやファシリテーションを行い、アップデートを繰り返しながら作成します。

ただし前述したように、コミュニケーションの対象者は顧客だけではありません。図1に示したステークホルダーのそれぞれに対してもタッチポイントを明らかにし、カスタマージャーニーを想定する必要があります。

この作業を通じて、タッチポイントと対象者が明確になったらメッセージを伝える媒体(手段と表現)を選定し、作り込んでいきます。この中から、デジタルな手法が効果的だと思われるものを抜き出し、リアルと足並みの揃ったデジタルマーケティングとして集約します

3)実際に事業を推進し、コミュニケーションを展開する【DO】

事業を推進する段階では、ステークホルダーとのコミュニケーションが現実に交わされます。計画・設計段階でプランニングしたアクションを展開していくわけですが、予期しない状況が発生したり、新たなチャネルの必要性が生じたりする場合もあります。
ブランド戦略との整合性を図りつつ、現場でのアップデートとフィードバックができる仕組みを想定しておきましょう。

4)メッセージに対する対象者の反応、CVRやKPIの達成度など、各種の効果指標をリサーチする【CHECK】

前項3の【DO】と4【CHECK】のプロセスは、同時進行で進みます。想定したコミュニケーションの結果が望ましいものとなっているのか、成果は表れているか、について、デジタルマーケティングにおけるCVR(成約率)など計画時に設定したKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)をリサーチします。数値に表れない対象者の反応など定性情報も重要なので、タッチポイントでの情報収集に気を配っていきましょう。

5)リサーチ結果を次のコミュニケーションに反映する【ACTION】

リサーチした結果を元に、コミュニケーションの全体像とブランド戦略を検証します。マインド、ビジュアル、ビヘイビアは望ましい形で展開されたか。そもそもの設定に瑕疵はなかったか。コミュニケーションのチャネルと対象者は適正であったか。チャネルにより相反するメッセージがなされていないか。表現系は適正であったか。
検証のポイントは設定したKPIや戦略により様々です。ここで得られた情報を活かし、次の段階に反映することで、ブランドのフォーカスがより精緻なものとなっていきます。

まとめ

マーケティングの知見は常に時代とともに進化し、新しい手法や考え方が次々と見出されています。特にここ数年は、コロナ禍という環境要因がデジタル技術の進歩とあいまって、消費の在り方や労働のスタイルを大きく変化させました。

消費者のインサイトを的確に把握し、ニーズにピンポイントで訴求できる「デジタルマーケティング」の手法は、こうした状況を背景に事業者から期待されています。

同時に、多くの競合の中から自分たちの主張を理解し、共感してもらうことで強い結びつきを獲得する「ブランド戦略」もまた、再び注目されつつあります。

「デジタルマーケティング」と「ブランド戦略」は、どちらも企業の戦略にかかわる非常に大きな、かつ重要なテーマです。

この二つを効果的に融合し、戦略的視点に基づいて的確にタッチポイントとメディアを設計することで、両者の有効性が相乗的に高まっていきます。

コラムでは関連するトピックを数多く掲載してまいります。この記事を読まれたあなたのビジネスに、どうぞお役立ていただけましたら幸いです。

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