INFOHUBコラム

組織横断プロジェクトを成功に導くための5つの秘訣

組織横断プロジェクトの多くは、一部の部署では解決が難しい会社全体の課題解決に立ち向かうチームです。既存の社内ルールや業界ルールを変える可能性も視野に入れ、参加メンバーは固定概念を打ち破る努力を求められる場面もあるでしょう。

ただプロジェクトがもたらしうる創造性や革新性は、参加メンバーの知見やひらめき、メンバーどうしの化学反応に委ねられる部分が多く、プロジェクトが始まってみるまで展開の予測がつかない領域でもあります。

では、予測不能と割り切って、プロジェクトの行方は成り行きに任せてしまってもよいのでしょうか。

答えはもちろん否です。アウトプットの創造性や革新性は不透明ですが、それらを良きものにするための環境整備であれば事前に準備し、検討中にも意識することが可能だからです。

参加メンバーが、その意識や精力をプロジェクトの実質的な内容に集中させるために、われわれはどのような「地ならし」を行うことができるでしょうか。組織横断プロジェクトにおいて、あらかじめ準備しうる成功の秘訣を5つのポイントに絞って紹介します。

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特に新規事業、DXのプロジェクトでは、組織横断のものが多いかと思います。

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目次

組織横断プロジェクトのメリットは何か

そもそもなぜ組織横断的なプロジェクトが必要になるのでしょうか。その大きな理由の一つはとくに最近目覚ましい社会情勢の大きな変革です。

たとえば「DX」といった言葉がもてはやされるように、デジタル化の波は業界を問わず避けて通ることができない課題となっています。またグローバル化やその他さまざまな社会情勢の流れは、今後も企業に、スケールの大きな、また根本的な変化を迫ってくることでしょう。

組織横断プロジェクトに期待される3つの機能

社会の変化に対応できる強靭な企業体制を構築できるかどうかを考えるとき、各部門の垣根を超えて、柔軟に企業の将来像を再構成できる能力の有無が、企業の命運の分かれ目となります。

そのため、組織横断プロジェクトを機能させることが各企業にとって最大の課題となりますが、ややもすると、プロジェクトの決定事項は「先進的すぎる」とみなされ、現場の納得感や実効性が乏しいままに、「骨抜き」の憂き目にあうことも少なくありません。

せっかく費やしたプロジェクトの時間を無駄にしないためにも、決定事項に実効性が保たれるよういくつかの工夫点を押さえておく必要があります。

と、その前に、そもそも一般的に組織横断プロジェクトに期待される機能を簡単に確認しておきましょう。組織横断プロジェクトの基本的な機能は、成功への工夫点を考えるうえでの根拠ともいえ、それらを振り返ることで、なぜそれら工夫点が求められるかの本質的な理解につなげることができます。

組織横断プロジェクトの機能① 専門知識の融合

組織横断プロジェクトに期待される機能として、まず第一は「組織横断プロジェクトに各部門の専門知識を融合させる」ことです。

参加メンバーに部門の偏りがあっては、議論の前提となる事業全体についての必要な専門知識が不足します。そのため参加メンバーは必然的に会社全体から満遍なく集められることになります。

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組織横断プロジェクトの機能② 情報収集と周知

また、第二は「偏りない情報収集と周知」という機能です。

現場のニーズを反映し、現場の実態に即した実現可能な結論を導く必要があるため、検討の途中途中で各部門の現場の意見を吸い上げる必要があります。またプロジェクトの結論を偏りなく周知し浸透させる際も、各部門に散らばる参加メンバーを通じて行います。

つまり情報収集と周知の双方向の役割を、組織横断プロジェクトは担うのです。

組織横断プロジェクトの機能③ 適正手続の保障

さらに、第三として「適正な手続きの保障」という機能があります。

会社全体の方向性を決めるような大きなプロジェクトであればあるほど、「会社全体で決めた」という手続きの「体」が求められます。なぜそのプロジェクトの内容が適正と言えるのか、またなぜいずれの組織もプロジェクトで検討された結論を順守しなければならないのかといえば、各部門の代表達がプロジェクトに参加して、十分な話し合いの末導いた結論だからです。

第一の専門知識の融合がより実質面を重視した理由とすれば、第三の手続き保障機能は形式面である「体」を重視した機能といえます。

以上が、組織横断プロジェクトに期待される3つの機能です。

3つの機能の実現を考えたとき、当然、漫然と参加メンバーを集めてチームを組めばよいというものでないことがわかります。参加者には何かしらの資質が求められ、またそのような参加者もさらに何かしらの心構えをもって取り組むことが求められるでしょう。

組織横断プロジェクトでは、受け身で決められたことを淡々とこなすという性質の業務ではなく、参加者個々も自発性や発信性をもって取り組む姿勢が求められます。これから紹介する「プロジェクトを成功に導く秘訣」は、プロジェクトリーダーにはもちろんのこと、リーダー以外の参加者も十分に把握すべき内容です。

参加者個々の隅々にまで、リーダーに引けをとらない高い意識が浸透していることこそが、プロジェクトを成功に導くいちばんの秘訣といえるかもしれません。

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組織横断プロジェクトを成功に導く秘訣① 組織横断プロジェクトのメンバーの人選

プロジェクトメンバーの人選によって、プロジェクトの成否が左右されることは、誰も否定できない事実です。

ここでは、具体的にどのような性質のメンバーが望まれるかについての2つの観点、「ハードスキル」と「ソフトスキル」について紹介します。

組織横断プロジェクトメンバーに求められる「ハードスキル」

組織横断プロジェクトの機能の1つに「専門的知識の融合」を挙げましたが、その機能を果たすためには当然、各部門に関する専門的知識を十分に持ち合わせている人に参加してもらう必要があります。またその企業内だけに通じる知見だけではなく、競合する他の企業がどうしているか、さらに専門的知見の背景にある企業の営みの本質について理解していることも望まれるでしょう。

それら各専門分野に関して、幅広く奥深い知識があればこそ、自企業の「タコツボ化」を客観的に気づくことができ、またそこから抜け出しうる柔軟かつ要を得た変革案を提起することも可能となります。

組織横断プロジェクトメンバーに求められる「ソフトスキル」

しかし、単に「ハードスキル」を持っているというだけでは不十分です。「ハードスキル」を活かすために、その知識を生身の他人に説得力を持って伝え、チーム全体の合意に無理なく反映させるためのコミュニケーション能力が欠かせないからです。

そのような「ソフトスキル」は、自分の知識の発信力や言葉のわかりやすさだけでなく、聞く姿勢をはじめとする、合意形成のプロセスを尊重する心構えも含まれます。

そもそもプロジェクトチーム内に活発な議論を起こすためには、チーム内に心理的安全性が確保されていることが必要です。これにはメンバー1人ひとりに、傾聴、相手の発言への尊重、さらに相手の存在への尊重といった、議論を行う上でのマナーが浸透している前提が必要となります。

チームの「良い雰囲気」というものは、非常にセンシティブであり、1人でもマナーを欠く参加者がいれば、とたんに脆く崩れ去ってしまう性質をもちます。自分の意見も間違っているかもしれないと考える姿勢、否定された時にも明るく振る舞う気遣い、できるだけ偉そうに見える態度で話さないようにする工夫、といった配慮は想像するよりもずっと重要なことです。

そのほか、人としての明るさ、素直さ、「間違っているかもしれない事」を臆せず言えることも、重要な「ソフトスキル」といえます。

組織横断プロジェクトに求められる「ソフトスキル」は後付けもできる

参加メンバーの人選として、もともと「ソフトスキル」を備えている人に参加してほしいところですが、そうでなければ、「ソフトスキル」を各自のなかから呼び起こし後付けできるよう、会議の冒頭によびかけても良いかもしれません。

各個人の性質についての適正か否かの条件は、いっけん人選の段階で決定づけられるように思われますが、けっしてそうではありません。

そもそも人間は多面的な生き物です。各自の人格や性質のなかからその場に相応しい側面を呼び起こしてもらうことを、自身や他のメンバーに求めても、決して無理強いとは言えません。むしろ自身や参加メンバーにとって、社会人としての成長の一歩を促すよい機会と捉えてもらうこともできるのではないでしょうか。

組織横断プロジェクトの「ベテラン」メンバーに注意

以上の「ハードスキル」「ソフトスキル」の有無・程度という観点で参加メンバーを分析したとき、「ハードスキル」は高めだけど、「ソフトスキル」は低い人の代表が「ベテラン」です。

あくまで一般論ですが、ベテランは、専門分野に関する知識も豊富で、また背景となる知識にも精通しています。さらに当該分野での長い経験があり、プロジェクトの参加メンバーとして、非常に頼れる存在です。

ただし、その反面、知識がありすぎるため、反論しづらいというデメリットがあります。また知識の裏付けとなる深い経験自体、実際に起こった出来事であるため、まず否定できません。

経験は否定できなくとも、そこから導かれる提案自体が旧態依然の内容だったりしますが、年下であることの多い他の参加メンバーは、リーダーも含めてそのことを非常に指摘しにくいというのが現実でしょう。

どうしてもベテランの発信力が強くなってしまう問題は、意識して取り除かないかぎり、高い確率で生じる問題です。「変革」を求めるプロジェクトであれば、その弊害が致命傷となる可能性もあります。

組織横断プロジェクトの「ベテラン」を活かす工夫点

実際にベテランから意見が出た後に、その弊害を指摘しては角が立ちます。そうではなく、プロジェクト検討の冒頭に、一般的な懸念として「経験豊かな参加者の知見をどう生かすか」という課題をとりあげ、そのような弊害が起こりうるから留意する、という意識をあらかじめ参加メンバー間に浸透させておくとよいでしょう。

そうすれば、いざそのような問題が生じたときも、ベテラン参加者もそれを一般的な問題として相対的に捉え、感情論にならずに、むしろ活きた知識・経験を、よりプロジェクトの趣旨に沿う適切な形で反映することができるのでないでしょうか。

ベテランからしても、これまで築き上げた経験と知見は、自分の存在やプライドの拠って立つ場所であり、多くの場合、それらを後進に伝えたいという気持ちに悪意や偽りはないでしょう。いたずらにベテランの善意を削いでしまっては逆にプロジェクトチームにとって損失です。

参加メンバー全員がベテランに対して尊敬の念をもって、従来の豊富な知見を最大限活かそうとする姿勢を見せることが重要かもしれません。

組織横断プロジェクトメンバーの新人にも注意

なお、新人や在籍期間が数年以内の社員は、一般的に「ハードスキル」、「ソフトスキル」ともに低いと考えられるため、基本的に、組織横断プロジェクトの参加者としては相応しくありません。ただし、いくつかのメリットもあります。

まず、新卒採用された社員であればとくにそうですが、「最近の若者」の感覚をもっているという点です。顧客に一定の若年層がいる企業の場合、それらの人々がどのような感覚やし好をもつかは、非常に重要な情報となりますが、若年層でない人が論理力や訓練で理解できるようになるものではありません。

「若者」と同年代の人に聞くことが唯一の情報を把握する方法であり、新人らのプロジェクトへの参加は、そのモニターとしての役割の点で大きな意味をもちます。組織横断プロジェクトが若者に向けたものである場合などは、若者でない人たちだけで決めるのはやはり相応しくなく、新人に近い参加メンバーを加えたほうがよいでしょう。

ただし、専門分野に対する知識が不足していたり、チーム内でのコミュニケーション方法が未熟なことが多分にあるため、それらの点は目をつむって、また他の参加メンバーがフォローする必要があります。

組織横断プロジェクトを成功に導く秘訣② 組織横断プロジェクトの目標設定

次に、組織横断プロジェクトの目標設定に関する工夫点です。

組織横断プロジェクトの目標は小さすぎず大きすぎず

組織横断プロジェクトの目標の大きさはどのように設定するとよいでしょうか。実現可能性を最大限考慮に入れて、ミニマムスタートを目指すプロジェクトがあるかもしれません。

ですが、スケールがミニマムがすぎるとそもそも組織横断プロジェクトの大きな目的である、大きな変革を実現できない可能性があります。

一方で、逆に初めからかなりスケールの大きな絵を描くようなプロジェクトもあるでしょう。

ですが、スケールが大きいと必要な予算や人材の規模も大きくなるため、最終決定する役員にとっても決断のハードルが高くなります。そのまま賛成をもらえる可能性は非常に低くなるでしょう。

また、プロジェクトメンバーとしても、いきなり大きな予算がつくことによる精神的なプレッシャーは非常に大きなものです。会社の意思決定方法として、イチかバチかの大博打に大金をつぎ込むような印象が拭えず、合理的で賢明な判断とはいえません。

組織横断プロジェクトの「目標設定」の工夫点

ではどうすればよいかというと、「大きな絵を描き、小さくスタートする」という折衷案が1つの有効な手段です。

まず目標をいくつかに区分けして、たとえば、①短期目標と②中長期目標に分けます。②中長期目標が「大きな絵」の最終形、つまり成功すれば「大きな変革」がかなうものと考えます。

ですが、前述のとおり成功するかどうか、また市場が予測通り反応してくれるかどうか不透明な点もあるため、「石橋を叩いてわたる」ように、段階的に①短期目標を設けるという構成が適当です。

試験的な意味を大いに含んで、①短期目標達成に向けてまずはプロジェクトを開始し、当該短期目標を達成したら次の短期目標達成のフェーズに移行し、着々と②中長期目標が成功するであろうと推測しうるエビデンスを積み重ねていきます。

これらの過程を繰り返し、社内コンセンサスが十分に醸成しえた頃合いを見計らって、本丸である②中長期目標に向けて、本格着手に踏み切ります。その段階まで来れば、プロジェクトチームや役員会もプロジェクトの成功に向けた確証を得られやすくなるため、無理のない決断に結び付けることができるようになるでしょう。

これら①短期目標を設ける頻度や慎重さは、会社のカラーも考慮した個別具体的な判断に委ねられますが、1つ共通して重要な要素に、すでに市場が来上がっているかどうか、の判断があります。プロジェクトの想定する市場がすでに出来上がってる場合、プロジェクトの内容が「極端な的外れ」になっている可能性は低くなりますので、②中長期目標を採択するハードルは下がり、試験的な①短期目標も厚く行う必要はありません。

ただし、その確証性があがる分、プロジェクトの革新性は大きくなくなるともいえます。

なお、試験的に①短期目標達成を目指している段階で、当然、プロジェクト時代を中止するという判断もあり得ますので、試験中のどのポイントで、何がどのくらい未達成の場合に中止と判断するか、いわゆる「撤退基準」を明確に設けることも非常に重要です。当初より後ろ向きなベクトルに目を向けるのは気が引けますが、忘れずに設定しておきましょう。

組織横断プロジェクトの目標に定量的要素を入れる

何をもって目標達成した・しないを判断できるか、という問題です。自分個人に関する目標設定であれば、自分だけがわかる主観的な指標を設定しても問題ないのですが、会社全体から注目を浴び、その成否が今後の会社の発展を占うような組織横断プロジェクトの場合には、客観的に判断できる定量的な指標を設定することが必須となります。

すべてについては難しいかもしれませんが、主要な項目については、数値目標を設定し、目標に対して現状の達成度はどうなのか、誰でも容易かつ適正に状況を把握できるようにしておかなければなりません。

たとえば、新商品であれば売上額、サービスであれば獲得顧客数、WebメディアであればPV数、定期購読者数等が指標となります。

組織横断プロジェクトの撤退基準こそ定量的に決める

また撤退基準についても、何らかの定量的な指標で明確に基準を定めることがおすすめです。

撤退しようとする場合、これまで費やしてきたリソースの多くが無駄になることが頭をよぎり、それを嫌って「やはり撤退しないでおこう」という心理状態が生まれがちです。これを「サンクコスト効果」と呼びます。

一時の心理状態にながされ、さらに損失の穴を広げてしまわないように、とくに撤退基準は主観の入り込む余地のない定量的な基準を設ける必要があります。

組織横断プロジェクトの目標は多すぎないようにに注意する

組織横断プロジェクトの目標の数は多すぎてもいけません。できるかぎり数を絞るようにし、最終的な中長期目標は基本的に一つとし、また一言で説明できるくらいシンプルなものとするのが適切です。

組織横断プロジェクトに限らず、会社の営みは、いかに限られたリソースで最大限のパフォーマンスを発揮できるかの勝負です。とくに通常業務にプラスアルファして進められるプロジェクトは、できるかぎり主目的を絞って、それだけに集中するという戦略をとらなければ通常の業務が回らなくなるでしょう。

また複数の目標を立てると、主要でない課題(つまりより解決容易な課題)のほうをより厚く議論してしまう「易きに流れる」状況も起こりかねません。より重要で本質的な課題にリソースを集中できるように、「逃げ場」を遮断しておくという意義も多分にあります。

組織横断プロジェクトを成功に導く秘訣③ 組織横断プロジェクトを議論するときの2つのフェーズ

とくに新規のアイデアを求められるような組織横断プロジェクトの議論の場においては、最終まとめに至るまでの「大きな2つの流れ」を意識する必要があります。

まず議論の視野を広げるために多様な意見・アイデアを取り上げる「①広げるフェーズ」、そして多様な意見を現実路線に基づいて焦点を絞り取りまとめていく「②収めるフェーズ」の2つです。リーダー(司会)がこれら2段階の流れを意識して、議論を促すことはもちろん必須ですが、一般の参加メンバーであっても、2段階を意識した議論の作法が求められます。

組織横断プロジェクトの「広げるフェーズ」

まず「広げるフェーズ」は、できるかぎり多く思いついたアイデアを挙げる段階です。

プロジェクトの広がりや革新性に関わる重要なフェーズであり、現実路線ばかりを語ってスケールが小さくまとまってしまうようなことは不本意です。また口に出そうとする意見が不完全なピースのようであっても、他のピースと合わせれば実を結ぶかもしれず、あらゆる可能性を排除せずに発話を試みる段階です。

各部門が管轄する現在の業務を意識しながらも、必ずしもその範囲にこだわらず、可能性を広くとらえて多くの意見を出す姿勢が求められます。自由なアイデア出しや発言は、意外と強く意識しないとできるものではありません。

リーダーを中心に強く自分や回りを促して、まずは思考モードの転換を図る必要があります。ときに「ばかみたいな意見」や「突飛すぎる意見」が飛び出すことがありますが、他のメンバーが発言するハードルをどんどん下げてくれるため歓迎されるべき意見です。

そして参加メンバーは、通常の思考モードに貼り付いている常識に基づいて、決してそれらの意見を嘲笑するような態度を見せてはいけません。「広げるフェーズ」で現実的な意見を言うことも問題ありませんが、他人が発言しにくくなるような「場を縮こせるような態度」をとることだけはご法度です。他人のアイデアを批判することはまず避ける「ブレインストーミング」の手法を用いることが適当でしょう。

他人の発言をむやみに否定することは避けなければなりませんが、アイデアに着想を得て、議論の方向を発展的に変更を試みることであれば、やはり歓迎されるべきことです。

「広げるフェーズ」では、プロジェクトの実務は実際どの部署が担当するかとか、予算はどれくらいまで出してくれるのかとか、まずはそれら細かいことは抜きにして、どんどん話を広げていきましょう。

組織横断プロジェクトの「収めるフェーズ」

「広げるフェーズ」のあとは「収めるフェーズ」です。俎上に載せたさまざまなアイデアを基に、現実的に実行できそうな内容を選んで、プロジェクト案をまとめるフェーズです。

まず多くのアイデアをそぎ落とし、路線を絞ったうえで、予算上の制約や、業務を負担する部署などを考慮に入れながら、現実の世界に落とし込んでプロジェクトを具体化します。バラバラに意見を出す「広げるフェーズ」に比べて、意見を集約する「収めるフェーズ」では、自由な議論の場に委ねることは適当ではなく、とくにリーダー(司会)のまとめの手腕が重要です。

またリーダーの負担をいたずらに重くさせないためにも、参加メンバーには、いまは「収めるフェーズ」であることを意識し、議論の収束に協力する重要な役割を担います。

「収めるフェーズ」なのに、これまでの議論と関係ない斬新なアイデアや、議論のまとめに貢献しない思いつきを口にするのは極力控えましょう。どうしても発言したくなったら、「まとめの段階で申し訳ないですがー」と一言付け加えて発話するようにしましょう。

組織横断プロジェクトを成功に導く秘訣④ 組織横断プロジェクトの決定手続き

組織横断プロジェクトは、原則、民主的な合議によって決定がなされる必要があります。

ですが、細かい点まで挙げれば決定が必要な事項は非常に多く、それらすべてを合議で決めなければいけないとすれば、とてもではないですが、予定の期間でプロジェクトを完了させることはできません。

組織横断プロジェクトはすべて合議で決めない

結論として、大事な決定事項は参加メンバー全員による合議で行い、細かな点はリーダーとサブリーダー等の数名で行うという、決定プロセスの切り分けが必要です。

参加メンバーには、通常業務に加えてプロジェクトの業務を課しているため、負担軽減のためプロジェクト業務もできるかぎりスリム化を図る必要があります。また重要な点に絞って厚めの議論を求めることで、参加メンバーの意識も重要な点のみに焦点を絞ることができます。

まんべんなく細かな点まで議論する場合に比べて、重要事項に関する議論の精度や質はかなり向上するでしょう。リーダーは意識して、何を合議に委ねる事項とし、何をコアメンバーだけで検討する事項とするかを議論の場で切り分けていく必要があります。

重要な事項で合議がなされているのであれば、組織横断プロジェクトの機能である「各部門の知見を融合させる」という趣旨にもとることなく、またその機能を阻害するものでもありません。

組織横断プロジェクトは手続きの適正さを意識する

なお、コアメンバーで決めた細かい内容であっても、後日、プロジェクトの参加メンバーに決定内容を伝え、承認を得るといった最低限の手続きはする必要があるでしょう。

組織横断プロジェクトの機能でも触れたとおり、形式的に適正手続きの「体」をとることは、想像以上に重要であり、下手を打つとその後のプロジェクト実行の段階にも悪い影響が出ることさえあります。たとえ実質を伴わない「体」であっても、適正に手続きをしたという儀式自体が重要です。

間違っても参加メンバーをぞんざいに扱ってはいけませんし、十分な議論も経ないまま反対を押し切り強引に意思決定してもいけません。適正手続きがなされないことで、まず一般的にチームとしての正当性が失われます。

また実際に冷遇された参加者の「しらけ」や「蔑ろにされた記憶」は、プロジェクトの実行の段階で「非協力」という形で、当該部門から意趣返しを受けることもありえるでしょう。逆に手続きを正当に踏んだうえでの合意・承認があれば、その手続きに関わった部門は、一般的にプロジェクトの結果に従う義務を負います。

効率性を意識しながらも、手続きの適正さを損なわないように配慮することがプロジェクトを成功に導くうえで大変重要なポイントとなります。

組織横断プロジェクトを成功に導く秘訣⑤ 組織横断プロジェクトも根回しは大事

プロジェクトの計画内容がよく、チーム内の合意・承認の手続きも手抜かりなく完了できれば、プロジェクトは順調に進むかといえば、そう甘くはありません。

最終的に決定をするのは役員会です。

役員のなかにプロジェクトのことを気に入らないと感じている人がいれば、役員会の決定の行方に黄色信号が灯ります。仮に承認されても、余計な条件が課されてしまうことも考えられます。

「プロジェクトの中身さえよければきっとうまくいく」と考えるのは、ある意味「青臭い」ともいえますし、詰めの努力を怠った無責任な態度といえなくもありません。そして具体的にどのような詰めを行えばよいかというと、それはずばり「根回し」です。

いっけんアンフェアにみえる「根回し」ですが、成るもの確実に成らせるという意味で全うあり、手段としても大変有効といえます。具体的な方法は、プロジェクトに対して誤解を生じているだろう役員や社内のキーパーソンを見定めて、懐に入りこみ懇切丁寧に事前説明をする、それだけです。

そのことによって得られる成果は2つ。1つはプロジェクトの内容を理解してもらい、誤解を解き、反対する理由をなくせることです。もう1つがさらに重要ですが、勇気をもって懐に飛び込むことで、逆に応援に回ってもらえる可能性をもねらえることです。いわば役員の人情に訴えかける方法ともいえます。

見方を変えれば、これほど手軽で有効な手段はありません。もし少しでもプロジェクト採択の勝率を高めたいリーダーであれば、使わない手はないといえるでしょう。

組織横断プロジェクトは関係者へのこまめな報告も大事

なお、役員のほかにも、プロジェクトの中心となる部署とはあらかじめ親密にしておき、プロジェクトの途中経過について随時情報提供するような姿勢も求められるでしょう。

こちらも「根回し」と同じ理屈であり、プロジェクトの決定結果を押し付けるよりも、ふだんから「こういう方向に決まりそうなんですが、問題ないですか。その際はよろしくお願いします。」というようなコミュニケーションをとっておくほうが得策です。特に上司クラスには情報が行き渡るように注意しましょう。 

まとめ

・組織横断プロジェクトの本質的な機能は、主に、①各部門の知見を融合する、②各部門からの情報収集や各部門への周知を効率よく行う、③適正な手続きを通じて、大きな変革の実行性を高める、の3つです。
・組織横断プロジェクトを成功に導く秘訣は、①「ハードスキル」「ソフトスキル」を意識した適正な人選が行う、②高めの中長期目標を立てながらも、段階的な短期目標も立てリスクを軽減する、③リーダーだけでなく各参加メンバーも、議論の過程における「広げるフェーズ」と「収めるフェーズ」を意識する、④意思決定の手続きを効率的に運用しながら、要所要所は参加メンバーによる合議によって決定し、適正手続きの保証の原則を外さないようにする、⑤役員などのキーパーソンに対する根回しや報告をこまめに行う、の5つです。

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