デジタルマーケティングという言葉は、ビジネスの日常語としてすっかり定着した感があります。しかしそれが指し示す範囲は広く、同じ会社、同じ部署の中でも、必ずしも理解が共有されているとは限りません。
そこでこの記事ではまず「デジタルマーケティング」とは何を指すのか、について定義します。そしてデジタルマーケティングの全体像を明らかにすると共に、どのようにして展開すれば良いのかについて、具体的に解説していきます。
効果的なデジタルマーケティングを実践するためには、一貫性のある戦略に基づいた計画的な視座が不可欠です。また社内・社外の関係者が望ましい形で関与できるよう、プロジェクトを慎重にマネジメントし、調整する機能も必要です。
目次
マーケティングの最適化を図るには、全体像を意識することが大切
マーケティングの定義、デジタルマーケティングの定義
JMA(日本マーケティング協会)によれば、マーケティングとは
「企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動である。」
と定義されています。
ここでいう「顧客」には、いわゆるカスタマー以外のステークホルダーである一般消費者、取引先、関係する機関・個人、および地域住民が含まれます。そして「市場創造のための総合的活動」とは、「組織の内外に向けて統合・調整されたリサーチ・製品・価格・プロモーション・流通、および顧客・環境関係などに係わる諸活動」を意味します。
一般にマーケティングというと販売計画や、商品・サービス単位の市場戦略と思われがちです。JMAではそれを「各商品の物理的経済的特性を直線的に売り込むマーケティング」と呼び、1987年の時点で「もはや通用するものではない」と喝破しました。
マーケティングが市場創造のための総合的活動であるのならば、それは経営の上層に位置する事業上の戦略でなければなりません。その意味で、マーケティングが担う領域は今日的な「ブランディング」にも近いと言えるでしょう。具体的には全体・統合的な視点で構築した戦略に基づき、商品・サービスや店舗、流通、人的コミュニケーションなどあらゆるタッチポイントを組み上げ、市場の創造を実現していくプロセスになります。
そう認識したうえで、下層のレイヤーとして「狭義のマーケティング概念」が存在します。タッチポイントを設計、具体化していく際に、以前は販売チャネルや広報、広告などの物理的(フィジカル)な媒体や人的接点を通じて、顧客をはじめとするステークホルダーにコミュニケートしてきました。これが狭義の「フィジカル・マーケティング」です。
これに今日では、インターネットをフィールドとする電子媒体を活用したコミュニケーション・チャネルが加わりました。この領域を一般的に「デジタルマーケティング」と呼んでいます。インターネット広告やSNSマーケティング、動画マーケティングなど個別の施策、すなわち統合的な「戦略」に対してデジタルメディアにおける各方面での「戦術」に位置づけられるすべてが、これにあたります。
なぜマーケティングの部分最適化は望ましくないのか
デジタルマーケティングは、だれがいつどこで接点を持ったか、という情報流通のトラッキング(追跡)が可能という特性を持っています。フィジカルでは例えば、ターゲット・セグメントの何%が雑誌広告を見たのか、そのうちの何人がアクションを起こしたのか、そのアクションは来店、問い合わせ、購入などどのレベルだったのか、を正確に測定することができません。デジタルならABテストのように効果や反応が数値で把握できるため、リサーチツールとして高い有用性があります。
しかし、ここに一つ落とし穴があるのです。
広義のマーケティング、戦略としてのマーケティングの視座を持たないまま、個々のデジタルマーケティングをそれぞれ展開した場合を想定してみてください。
企業全体、ブランド全体として「どのターゲット・どんなペルソナに向けて、どんな商品・サービスを展開するのか」という方向性を共有していない組織は、ひとまず目の前の状況を改善する方向に向かいます。
長年、消費財メーカーとして国内市場で事業を展開している企業があったとしましょう。人口構造の変化に伴い、既存顧客の高齢化が進み売り上げが減少しています。そこで従来力を入れていなかったデジタルマーケティングを導入することになりました。
デジタルマーケティング部門では、とりあえずGoogleにリスティング広告を打ち、同時にSNSの公式アカウントで情報発信して新規リード客の獲得に臨みます。広告は同じ消費財業界を中心にバナーとリスティングを展開しましたが、あまりCVには結び付きませんでした。そこで出稿パターンやメディアを変え、少しでも成果が得られる施策を展開します。
一方SNSでは代理店の支援もあり、1か月でなんとフォロワー10万人を達成することができました。しかしこちらも、CVRが伸びません。一部のフォロワーからの反応は良好で、商品活用アイデアコンテストへの応募も少なからずありました。それを反映して新製品発売を試みましたが、期待したほどの売り上げは得られません。何がいけなかったのでしょうか。
この仮想事例では状況を象徴化して書いているので、事態がわかりやすいかと思いますが、問題点は「ターゲットと施策の不一致」にあります。
業績が落ちてきた原因は、従来顧客層の高齢化にあります。商品がコモディティ化し、顧客は低価格帯の他ブランドに流出していたのです。また感染症の流行が影響して、同社の主な販売チャネルであった百貨店に出向く機会が減っていました。その一方で、居住地に隣接する量販店やネットでの販売に注力していた競合の新商品が伸長していました。そして若年層は、そもそもこのカテゴリーの商品の熱心な購買層ではありませんでした。
この企業は、本来ならばSWOTやポートフォリオ分析で市場再評価を行い、離反している旧顧客にもう一度戻ってきてもらう戦略をとるべきだったのです。あるいは、新市場に挑戦するのなら商品戦略を確立することが先決でした。
まったく違うセグメントに対して一所懸命コミュニケートし、トラッキングしてデータが得られても、本来目指す顧客層、他のリアルなコミュニケーションのターゲットと一致していなければその施策の貢献度は小さくなります。興味関心がない層をいくらマーケティングで増やしても、成約に結びつかなければ意味がありません。一部の熱心なSNSフォロワーは、完全なエコーチェンバーとしてその界隈だけで盛り上がる、コスト対効果の低い集団だったといえます。
実は、以前からの顧客はまったく離反していたわけではないのです。製品をリピートしようと電話をかけたものの、自動音声に悩まされなかなかつながらず、そもそもスマホでサイトにアクセスするまではできましたが、カスタマー窓口がどこにあるのか見つけられなかったのです。問い合わせフォームも中高年ユーザーにとっては使いづらく、ユーザー登録はただただ煩わしいものでした。
現状を分析し、どのような戦略を採用するのか、を全社の全部門で共有すれば、このような事態は避けられます。「既存顧客をフォローアップする」「新規顧客に新製品をアピールする」という方向性が示されていたなら、デジタルマーケティング部門は
- 商品開発部門や営業部門と連携し、現サイトのUI・UXを見直す
- 中高年の利用率が高いLINEを活用する
- フィジカルなダイレクトマーケティングと連動した施策を展開する
- 若年層向けにネット専用の別ブランドを立ち上げ、経営資源を集中する
など効果的な策を展開できたはずです。同時に
- 従来商品のリ・ポジショニング
- 販売チャネルの再構築
- 既存ロイヤル顧客に向けたダイレクトマーケティング
- 新商品コンセプトの立案と戦略策定
といったフィジカル面の見直しで全社の足並みをそろえ、「戦略に基づいた部門展開」「デジタルとフィジカルのリンク」を図ることが重要だった、というわけです。
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マーケティングのタッチポイントの設計は上流から下流へ
マーケティングにおいては、戦略および目的を明確にしたうえで、必要な施策を展開するためにデジタル・フィジカル両面でタッチポイントの流れを設計していくことが重要です。
タッチポイントの設計に当たっては、マーケティングファネルのフレームを活用するとわかりやすいでしょう。
ファネル(Funnel)とは逆円錐形をした「漏斗」のことです。
広い開口部で集めた見込み客(リード)を徐々に絞り込んで成約に近づけ、商品・サービスの検討対象として認識してもらい、購入に至るまでの段階を図式化したフレームです。そしてそこで終わらせず、顧客となってくれた人々に継続を促し、より強い結びつきを感じていただき、周囲にも良好な影響を拡散してもらえるよう再び逆向きに広がっていく形状を模しています。
前章で例示した「高齢化した顧客を持つ消費財メーカー」の場合で考えてみましょう。
絞り込むプロセス(購入の前段階)
■第一段階「認知」:フィジカル…(例)DM、会員誌、展示会ご招待など
デジタル…(例)LINEなどSNS登録、メルマガ登録、QR、web誘導など
■第二段階「興味・関心」:フィジカル…問い合わせ電話、資料請求、商品お試し
デジタル…問い合わせメール、web閲覧、資料ダウンロード、SNS閲覧
■第三段階「理解」:フィジカル…来店、接客、商品説明・体験
デジタル…問い合わせメール、チャット、webサイト再訪
■第四段階「比較・検討」:フィジカル…来店、競合店買い回り
デジタル…競合web探索、検索、レビュー探索
★購入:フィジカル…実店舗購入、カタログ購入
デジタル…ECサイト
拡散するプロセス(購入後の段階)
■第一段階「満足」:フィジカル…ユーザー登録はがき、電話フォローアップ、礼状
デジタル…SNSフォローアップ、ユーザーレビュー登録
■第二段階「継続」:フィジカル…リピート来店
デジタル…アクセスリピート
■第三段階「発信・推奨」:フィジカル…口コミ、知人友人紹介
デジタル…SNS拡散、ブログ、レビュー評価
各段階に応じたタッチポイントを用意し、上流から下流へ絞り込み、ブランド評価が拡大再生産されていく仕組みを慎重にプログラムしていきましょう。
デジタルマーケティングの全体像を見据え、ペルソナとカスタマージャーニーの設定を行う
前章で示したように、デジタル・フィジカル両面で展開するマーケティングファネルが把握できたら、これをベースとしてタッチポイントにストーリーを与えるべく、ペルソナとカスタマージャーニーの想定を行います。
参考:ブランド戦略にデジタルマーケティングを効果的に融合させる (tryx-co.ltd)
ペルソナやカスタマージャーニーを設定するには、顧客をはじめとするステークホルダーと実際に接触する現場の知識・経験が有用ですが、それらは必ずしも顕在化して認識されているとは限りません。そこでファシリテーターによるワークショップや集団討議、社内システムを用いた情報交流などを活用して、顧客感情の可視化、暗黙知の共有化を図ると効果的です。
ただ、そうはいってもお客さまの心理状態がいつ、何によって変容したのかをロジカルに説明するのはなかなか困難です。そこでワークショップによる「右脳的」な定性情報の抽出に加え、例えば電通デジタルなどでは「左脳的」な定量調査の可能性を示唆しています。
参考:顧客感情を可視化するカスタマージャーニー作成法 | ウェブ電通報 (dentsu-ho.com)
これは、コンバージョン(成約)の決心に至る要素や、推奨意欲向上に貢献した要素は何だったのか、またマイナスの評価となる要素は何なのか、について調査シートにより明らかにする試みです。カスタマージャーニーの考え方に説得力を与え、社内の合意、共有化を進めやすくする手法として可能性を秘めています。
「マーケティングの4P(4C)」を具体化する
マーケティングでは、その展開を4要素に分類した「4P」と呼ばれる古典理論があります。すなわちProduct、Place、Price、Promotionの4つで、カスタマージャーニーやタッチポイントの設計は、これらの有機的な組み合わせである、と表現することもできます。
もうひとつ、Customer Value、Convenience、Cost、Communicationの4つに相当する領域をマーケティングの構成要素とする「4C」の考え方もあります。
デジタルマーケティングにおいて「4P」「4C」の諸要素を
- 誰(ペルソナ)に対し
- どのメディアで
- どのような態度・スタンスで
- どのようなアクションを起こしていただくことを期待するのか
ということを意識してマーケティングファネルを形成することが、成功への必要要件となります。
デジタルマーケティングの全体像構築を支援するtryXの視点
前述したように、デジタルマーケティングの展開に際しては、「なにを目的(ゴール)として行うのか」を見失わないよう一貫性・統合性の視点を保ちつつ、全体と個別のバランスを見極めることが大切です。私たち株式会社tryXはデジタルマーケティングの専門集団として、戦略立案からタッチポイントにおける実行フェーズまで一貫して、顧客企業を支援する態勢を整えています。
全体像の設計から具体施策、効果測定まで一貫した態勢
最初に目的を明らかにし、ブレや綻びがないよう一貫した視座に基づいた取り組みで臨みます。具体施策から効果測定まで、一連の流れの中で全体像を見極めた上での支援を得意としています。
例えば表面に現れているKPIの改善にとどまらず、総合的な見地から問題点と課題を明らかにし、上流の戦略見直しやターゲット選定など的確な施策を施すことでクライアント企業の成果に繋げます。
デジタルマーケティングの支援フェイズ
戦略策定支援…現状の分析、市場環境、競合環境調査、目的とゴールの提案、施策の評価および策定、ロードマップ提示とKPIの設定など
オペレーション設計支援…組織体制の構築および情報共有・交流の仕組みの形成、データ収集と分析スキームの策定、カスタマージャーニー設計、情報システム評価など
オペレーション実施・効果測定・改善支援…リスティング広告・SNS広告運用代行、サイトの制作・改善、ABテスト、SEO・コンテンツ制作、プロジェクト管理、マーケティングシステム開発など
データの裏付けとロジカル思考から注力すべきポイントを見つけ、レバレッジ効果の高い箇所から改善点を提案していくことができます。
重要なのは「幹を見る」視点
全体像を整理・把握することで、戦略と施策を幹・枝・葉に切り分けて整理することが可能となります。その視点から解決すべき課題を導出し、枝葉にとらわれない幹=目的に合わせた本質の改善に寄与する最適解を提案します。
クライアント企業様の一員として、プロジェクト全体をマネジメント
デジタル・ITテクノロジーの知見と、マーケティングに関する知識・経験、そしてビジネスそのものの理解。デジタルマーケティングのパワーを最大限に引き出すには、この3つの要素の掛け合わせが必要です。
私たち株式会社tryXは、いつの場合でもクライアント企業様の立場・目線に立って、プロジェクト自体をマネジメントしてまいります。
そのために自らの指針として
- お客さまと同じ目線で考えること
- データドリブンで改善の頻度を上げていくこと
- データやツールを過大評価しないこと
- バズワードに踊らされず、本質を見極めること
- 会社ではなくマーケットを見ること
の5つを掲げ、例えば社内関係を調整する必要が生じたり、新規事業などで外部のベンダーと共に開発を進める際にも、顧客企業様の側に立ってその意思を反映し、より望ましいゴールに向けてマネジメントを行ってまいります。
まとめ
この記事では、デジタルマーケティングを効率的かつ効果的に進める前提となる、全体像の把握と立案について、解説しました。
広義のマーケティングは事業戦略、ブランド戦略にほぼ等しく位置づけられます。そしてそれを次の段階、より現場に近いところでフィジカル、デジタル両輪によって顧客体験を創造していくプロセス、本論ではこれを狭義のマーケティングと位置付けました。
この広義~狭義の流れの中で、マーケティングファネルを用いた顧客体験の時系列的ステージと、ペルソナおよびカスタマージャーニーによるシンボリックストーリーを想定していきます。これにより、マーケティングは全体最適の状態を理解・共有したうえでの、個別展開が可能となります。
これからデジタルマーケティングの実行をお考えの皆さま、また既に展開していて、その効果がいま一つ実感できない、とお悩みのご担当者様は、ぜひ一度私たちtryXにご相談ください。
現在の状況からどのような取り組みを始めるのが最善なのか、不足している情報が何で、目指す場所はどこに設定すべきか、とことんお話をうかがって、御社にとって最も望ましいデジタルマーケティングのあり様を、全体像の立案・設計からしっかりとご提案させていただきます。
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