企業のみならず、官公庁や自治体、学校、病院などあらゆる場面でDX推進が求められています。こうした時代の流れに伴い、デジタルマーケティング人材の育成ニーズが急激に高まっています。
デジタルマーケティングと一口に言ってもその指し示す範囲は広く、求められる人材像もまた多様です。
そこでこの記事では、業種を越えて共通する、デジタルマーケティング推進に必要な人材の基本的な要件をまず明らかにしていきます。次に、どのようにしてそうした人材を育成していけばよいのか、について詳しく解説して参ります。
組織にとって、デジタルマーケティングを使いこなす人材は今後必ず必要となります。というより、全員がデジタルに対応できる知識や知見を持てるよう、従業員全体のデジタル基礎体力を底上げしていくことが求められるのです。
本記事を参考にして、望ましいデジタルマーケティング人材の育成計画にお役立ていただければ幸いです。
目次
デジタルマーケティング推進に求められる人材とは
デジタルマーケティングの中には、例えばオンラインでのマーケティングを統括するディレクター職、アクセス状況の解析やデータ分析を行うリサーチャー、システムへの反映や構築を担うエンジニア、デジタル広告を運用するプランナーなど、様々な領域が存在します。それぞれの分野は明確に棲み分けされているとは限りません。企業によっては複数の業務領域をまたがって担当していたり、場合によってはディレクターがすべて一人でこなさなければならない状況もあります。
また直接デジタルマーケティングにかかわらない部署の従業員も、顧客をはじめとするステークホルダーに対し適切なコミュニケーションのプランを練ったり、市場の現状把握と将来予測のため参照データを検討したりする際に、デジタルの知見が必要となってきます。
環境変化に即応し、組織のダイナミズムの最適化・最大化を図るためには、組織全体で「デジタルマーケティングに関するリテラシーの底上げ」を図る重要性が高まっているのです。
デジタルマーケティングに関するリテラシー=デジタルマーケティング推進に求められる基本的な人材は、次の4要素を備えた人物像と定義することができます。
・ビジネススキル
・マーケティングセンス
・戦略理解
・テクノロジー理解
それぞれの具体的な内容について、次章で述べていきましょう。
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必要なのは「ビジネススキル」「マーケティングセンス」「戦略理解」「テクノロジー理解」の4領域
前述したように職種や職階にかかわらず、4つの領域に関するベーシックな理解と、それぞれをブリッジする俯瞰的な視点が必要とされる時代がやってきます。組織を構成する全員がその能力を共通言語とすることで、デジタルのマーケティングやコミュニケーションのみならず、リアルな企業コミュニケーションの質も相乗的に高め、組織のパワーを最大限に発揮できるようになります。
「ビジネススキル」に関する領域
日常の業務を円滑に、無駄なく的確に遂行するために必要な、いわば”ビジネスの基礎体力”に相当するスキルです。
・論理的思考能力…物事を筋道立てて理解し、また組み立てることができる能力です。情報と情報を結び付けて因果関係を推論したり、PDCAに基づいてプランを立てたり、漏れや抜けのない網羅性を保つ際などに必要となる基本的なスキルと言えます。
・プロジェクト・マネジメント力…その職階や職責に応じて、管理するプロジェクトを遅滞なく進める能力です。進捗に気を配り、阻害要因を排除し、適切にマイルストーンを確認するなど慎重さと共に、予期せぬ事態に対応する臨機応変さが要求されます。
・チームビルディング…プロジェクトを進めるうえで、複数のチームメイトをまとめて最大限の相乗効果を発揮できるよう運営するスキルです。チームリーダーでない場合でも、チーム内のコミュニケーションが円滑に行われるよう配慮できる能力が求められます。
・コンテンツ制作管理…ビジネスには日々様々なコンテンツが発生します。事務連絡書類、データ資料、報告書、プレゼン提案書以外にも、社内・社外に発信するコミュニケーション・コンテンツを制作する場面も発生します。少なくとも正しい日本語表現や誤字脱字のチェックなど、基礎的なレベルは最低限必要とされます。
・コミュニケーション能力…ビジネスとは畢竟(ひっきょう)、人と人とのコミュニケーションによって成立するものです。伝えたいことを適切なタイミングで過不足なく伝え、聞いたことは内容を取り違えずに正しく把握する態度が求められます。組織のタテヨコのセクションを越えて情報を共有する場合もあり、全方位で望ましいコミュニケーションを心がけなくてはなりません。
「マーケティングセンス」に関する領域
「マーケティング」とは、非常に広い領域を包含する概念です。広義には市場創造の総合的活動全般を指し、事業戦略構築と展開に関するほとんどの施策が含まれます。狭義のマーケティングは自社の商品・サービスを市場で販売するための、情報収集と提供の活動と定義できるでしょう。
狭義のマーケティングは、従来型のマス(フィジカル)・マーケティングと、デジタルマーケティングに分類されます。デジタルマーケティングは、ユーザーの動向をone to oneでダイレクトにつかむことができます。一方、紙や電波、交通機関やビルボードなど物理的な広告媒体を用いるマス・マーケティングは、広い範囲で人々に告知するのに適した特性を持つものです。
適切なデジタルマーケティングを実施するためには、マーケティング活動全般の理解と、それを活用し展開する適性が求められます。
・マーケティングの基礎知識…4P(Product、Place、Price、Promotion)あるいは4C(Customer Value、Cost、Convenience、Communication)に代表される、市場戦略を決定づける諸要素に関する基本的な理解。
・情報収集力…アンテナを伸ばして自社商品・サービスを展開する市場の動向や競合状況、また事業に影響を与える可能性のあるマクロ・ミクロの情報を察知し、収集する能力。
・好奇心、進取の気性…スピード感をもって移り変わる市場環境や技術、トレンドに対して常に興味・関心を持ち、積極的に試し、取り入れようとする態度。
・発想力…VUCA(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:あいまい性)と呼ばれる予測が困難な時代に、ブレイクスルーの種を発想できる柔軟な思考。
「戦略理解」に関する領域
デジタルマーケティングは、広義のマーケティング、すなわち事業戦略に基づいて展開されるものです。適切に実施するためには、自社の事業戦略やブランド戦略がどのようなものであるのか、十分理解を進めておく必要があります。
・自社の戦略ポジショニングの理解…自社の戦略を理解するための前提として
・SWOT分析(自社の強み・弱み、機会・脅威)
・STP分析(Segmentationセグメンテーション:狙うべき市場領域、Targetingターゲティング:狙うべき顧客属性、Positioningポジショニング:優位性が確保できるアプローチの方向性)
などの基本的な戦略策定フレームワークを活用し、現状と目指すべき領域を適切に把握・理解しておく必要があります。
・顧客特性の理解…セグメント設定やターゲット設定で絞り込んだ顧客の解像度を、デモグラフィック属性、ライフスタイル属性を軸として、ペルソナやカスタマージャーニーなどの手法を用いて詳細に把握します。
・自社の戦略理解…ポジショニングに基づいた自社戦略の方向性に関する理解度です。既存市場で勝ち残り成長・拡大を目指すのか、革新的な商品・サービスで新たな市場の開拓を目指すのかなど、戦略方向性の意図と具体的な施策を理解することが、マーケティングの実効性向上に寄与します。
・業界動向の把握…マーケティングセンスを駆使して集めた情報は、ビジョンを伴った戦略立案に活用されます。経済環境や業界の動向が今後の自社にいかなる影響を及ぼすのか、的確に把握し予測する能力も、マーケターに欠かせない要素です。
「テクノロジー理解」に関する領域
デジタル技術は日々発展、バージョンアップを続けています。デジタルマーケティングにかかわる人材は、共通言語としてデジタルメディアの基礎に関する理解を有することが、必要条件となります。加えて担当する分野におけるテクノロジーやトレンドについては、最新の情報に接することが求められます。
・デジタルメディアの種別と特性に関する基本的な理解…インターネット広告の種別やその特性・効果、SNSで情報を取り扱う際の留意点など、デジタルメディアに関するベーシックな理解はもはやマーケターでなくとも必須とされる時代です。
・システム構築や技術に関する理解…デジタルマーケティングにおいて、情報の収集や共有・発信を的確に行うため、システムを構築する場合があります。既存の社内外のリソースを活用するケースがほとんどですが、その機能を理解したり、分析に活かしたりできるよう基礎的な知識を持っておくことが推奨されます。
・アクセスログ解析の手法…webサイトのアクセス解析としてはGoogleアナリティクスが一般に知られていますが、その使い方やデータの活用法などについては一通り理解しておく必要があります。特に従来のユニバーサルアナリティクスは2023年7月1日にデータの取得を終了することが決定しています。新たな規格のGA4への移行方法や両者の違いなどは把握しておかなくてはなりません。
・セキュリティ管理…リモートワークが一般化し、情報共有、協働推進を目的とした業務プラットフォームのクラウドシフトが進みました。ビジネスのほとんどのシーンで、常時インターネット接続が前提となっている現在では、サイバーセキュリティ(ネットワークセキュリティ)の重要性が非常に重要です。またデータの流出は必ずしも不正アクセスのみではなく、USBメモリやプリントアウト書類の持ち出しといったヒューマンエラーが大きな原因にもなっています。
顧客情報を扱うデジタルマーケティングにあって、倫理面も含むセキュリティ管理意識の徹底は非常に重要な要素です。
デジタルマーケティングにかかわる人材には、「ビジネススキル」「マーケティングセンス」「戦略理解」「テクノロジー理解」という4分野の基礎知識習得が期待されます。さらに、各分野の知見をバランスして持つことで、それぞれをブリッジして俯瞰することができれば、異なるスキル同士の相乗効果が高まります。確実に習得したベーシックな知識は、ブリッジによる化学反応で発想のジャンプが期待できます。状況を的確に観察し、見極め、斬新な視点で行動に移すというショートサイクルを回していけるアジリティな能力こそ、VUCAの時代に望まれるデジタルマーケティングのスキルといえるでしょう。
企業としての人材育成ビジョンを明確にする
※出典:経済産業省ニュースリリース
デジタルマーケティングを意識した人材の獲得や育成を計画的に行っていくためには、企業としてのデジタル人材ビジョンを確立することが重要です。前章で示した要件をベースに、職場全体の理解を得てデジタルに対応した人材育成計画をスムーズに進めるため
・なぜデジタルマーケティング人材が求められるのか
・なぜ一部の専門部署だけでなく、全体の底上げが必要なのか
・目標とする人材像はどのようなものか
についてトップが明確に表明することが大切です。
また計画の立案に当たっては、単にデジタル関連業務に秀でた人材の獲得や育成を目指すだけでは不十分です。マネジメントや組織の階層に応じて
・DXの推進やデジタルシフトが社会の中でどういう意味を持ち、今後のビジネスにどんな影響や変化をもたらすのかを理解し、組織内にビジョンを具体化できる経営人材の育成
・デジタルテクノロジーと現場のビジネスをつなげられるマネジメント人材(ブリッジパーソン)の育成
・全社的なデジタルリテラシーレベルを向上させる教育・研修システムの設計と運用、整備
・デジタル対応能力を的確に処遇できる人事評価制度の立案と整備
など社内体制を整備していく必要があります。
参考:デジタル時代の人材マネジメント | NRIジャーナル | 野村総合研究所(NRI)
人材育成の仕組みをつくる
人材育成の方針が明らかになったら、具体的なプログラムの策定を行います。経営トップ指揮のもとで、総務や営業など主要セクションの協力を得ながら、場合によっては協働のプロジェクトを組織して全体の計画を立案していきます。
プログラムは、企業の規模や社内リソースの有無に応じて、実現可能なものにしていかなくてはなりません。
組織内での個別または集合研修だけでなく、オンラインを活用したリモート研修や、社外のプログラムに参加する形での自学支援、学習者同士が交流しモチベーションを高めるコミュニティサイトの運営、自分で手を動かし、体験・トライができるデジタル実習環境の整備など、学習のスタイルは様々に考えられます。自社内だけですべての設計をまかなうのは困難が伴いますので、仕組み作りを助言・伴走してくれるパートナーを選ぶのも選択肢のひとつでしょう。
経済産業省および独立行政法人情報処理推進機構(IPA)では、実践的な学びの場であるデジタル人材育成のプラットフォーム「マナビDX」を開設しています。ここではDXリテラシー標準の全体像が示されており、デジタル人材育成の指針となっています。企業の社内研修にこれを活用する場合は受講料や受講期間中の賃金に対する助成が受けられますので、仕組みの整備が難しい事業者は利用を検討されてはいかがでしょうか。
参考:デジタル人材育成プラットフォーム「マナビDX」を開設しました! (METI/経済産業省)
マナビDX – あなたの学びに変革を!学んで身につくデジタルスキル (ipa.go.jp)
まとめ
デジタルに関するスキルのアップデートは、いまやすべての社会人、企業人に必須のものとなりました。これを活用し組織のパワーを向上させていくためには、まずトップが範を示しデジタルマーケティングそのものの重要性を社内に浸透させることが重要です。
そして自社として求める人材像を明らかにし、積極的にこれを育成支援する仕組みをつくっていかなければなりません。「自分の部署にはあまり関係がない」という認識を持つ人々や、どんな組織にも存在する変革に対する抵抗勢力に対しては、丁寧な情報提供で理解を求め、共に参画を促していくことが大切です。
そしてトップ、ミドル、ボトムの各階層や部署に応じて適切な人材育成プランを展開すると共に、育成だけでなく形成したスキルを活用して業務に活かしたり、その結果を評価する仕組みも合わせて導入する必要があります。
学習することそれ自体の方法は、前述したように企業側で用意するリアルやオンラインの研修のほかに、自主的な学習の支援制度や講座への派遣などさまざまな手段があります。企業の規模や持てるリソースに合わせて、適切に組み合わせつつ望ましい人材の育成に努めていきましょう。
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